と医者が言うのは簡単ですが、日々抜け落ちていく髪の毛を前に落ち着けるわけがないですよね。でも、それでも冷静になり治療の順番だけは守ってほしいのです。

なぜなら、AGAは進行性なので順番を飛ばしてしまうと効く薬がなくなってしまうからです。

飲むと高確率で発毛が期待できるミノキシジルタブレット(通称ミノタブ)という薬がありますが、焦って高濃度のミノタブに真っ先に手を出してしまうと、ミノタブに対して貴方の身体に耐性が出来てしまいお手上げ状態になってしまいます。

そのため、初めは市販の育毛剤などの「薄い薬」から徐々に試し薄毛の進行に合わせて徐々に濃い薬に変えていき、最後は自毛植毛を検討するなど、STEPを踏んで丁寧に薄毛対策を進めていくことが何より大切です。

以下に、失敗しないAGA治療のためのSTEP(=治療の順番)を解説いたします

男性型脱毛症(AGA)について理解しよう

5αリダクターゼⅡ型という酵素によって男性ホルモンがジヒドロテストステロンというより強力な男性ホルモンに生まれ変わり、ジヒドロテストステロンがヘアサイクルを狂わせてしまう状態をAGA(男性型脱毛症)と呼んでいます。

まずは全体像を抑えることが大切ですので、基礎に立ち返ってAGAへの理解を深めて下さい。

まずは市販育毛剤から薄毛対策を始めよう

AGAの病態を理解したら市販育毛剤から薄毛対策をスタートさせましょう。

リアップなどのミノキシジル外用薬(発毛剤)はこの段階ではおすすめしません。なぜならAGAは進行性なので、発毛剤という名のジョーカーは手元の武器として取っておきたいからです。

発毛剤に手を出すのは市販育毛剤を最低半年試してからにして下さい

なお、下記のSTEP2参照記事その1とその2は、実はどちらも同じ育毛剤を推奨しています。推奨理由は、その育毛剤だけが初回時に自宅で遺伝子検査を行えるからです。

育毛剤には合う合わない(当たり外れ)が必ずありますので、遺伝子検査を先に行ってから育毛剤を選ぶことで発毛確率を少しでも高めましょうというのが当院からの提案です。

市販育毛剤が効かない人は「発毛剤」に切り替えよう

遺伝子検査を行った上での育毛剤選びで薄毛対策を行った結果、事前にご自身が期待していた成果が得られなかった場合、より強い育毛剤であるミノキシジル外用薬(通称“発毛剤”)に切り替えましょう。

薄毛の進行を食い止める(飲み薬スタート)

STEP3までは頭皮への塗り薬による薄毛対策でしたが、STEP4からはより踏み込んで飲み薬による脱毛予防治療を開始します。

脱毛抑制薬であるプロペシア(成分名フィナステリド)は、肝機能への影響や精子の奇形、性欲減退などの副作用リスクがあるので、手前のSTEPを飛ばしていきなりSTEP4から開始するのは賛成いたしかねますが、進行性であるAGAを食い止めるためには避けては通れない治療ですので、しっかり記事を読んで勉強してください。

さらに強力な脱毛抑制剤と言われているザガーロ(デュタステリド)についても以下の記事で解説していますが、巷(ちまた)で言われているほどプロペシアと差は無く、生え際に効くというのも完全なデマです。

「諸刃の剣」ミノキシジルタブレットで一気に発毛させる!

AGA専門クリニックが「発毛実感率98.6%」などとうたっているのは、ミノキシジルの錠剤(ミノキシジルタブレット)を服用することによる攻めの発毛治療の結果のことを指しています。

STEP3では、同じミノキシジル育毛剤として使い治療を行いますが、STEP5では錠剤にして頭皮の中から毛根にアプローチしていきます。

ただしこの薬は、心不全などの循環器障害を起こしてしまうことがあるため、AGA診療ガイドラインで非推奨扱いになっています。

従って、もし服用することを考えているなら下記のSTEP5参照記事を熟読してからにして下さい。結果が出る薬であることは間違いありませんが、副作用が強い薬ですので安易に手を出すのは禁物です。

間違いだらけの自毛植毛

薄毛治療の最終手段は、自分の髪の毛を後頭部から頭頂部(つむじ周辺)、あるいは前頭部(M字)に移植する「自毛植毛」です。

誤情報が多く飛び交っていて多くの患者さんが泣いていますので、当サイトの記事中で最も熱を入れて執筆しています。

以前当記事ではFUTと呼ばれるメスを使って頭皮をはぎ取る植毛法を推奨しておりましたが、FUTの名手と呼ばれる外科医が高齢によりFUEと言われるメスを使わない植毛術を行うようになりました。

ただし、FUTと比較することでFUEの長所短所も見えてきますので、読むのが大変かも知れませんが自毛植毛の基本を理解する上で、まずはFUTを勉強してみてください

AGA専門クリニックや自毛植毛クリニックは、一人でも多く患者さんを集めてたくさんのお金を落としてもらいたいが為に、順番をすっ飛ばしてSTEP4やSTEP7から治療を開始しようとします。

でも、市販の育毛剤で治療効果が出る人が一定数いらっしゃるのは事実だし、飲むミノキシジル(ミノタブ)ではなく塗るミノキシジル(発毛剤)で十分なことも多々あります。

きつい薬を飲めば発毛期待度が上がるのは自明の理ですが、そのような治療方針は患者ファーストとは言えないし、体に優しい市販育毛剤などで結果が出るのであれば、わざわざAGAクリニックに通う必要はないと思います。

とはいえ、「専門家の意見を聞いてみたい」という衝動を抑えられずAGA専門クリニックで治療を受けたいという貴方の気持ちを無理に押さえつけるつもりはございませんので、

ミノキシジル発毛剤(外用)とミノタブ(内服)は併用禁忌みたいなもの。同時使用するなら非ミノキ系育毛剤と組み合わせすべし

AGA専門クリニックに診察に行くと、育毛剤タイプのミノキシジルと、飲み薬タイプのミノキシジルタブレット剤を処方されることが多いでしょう。

実はこれ、全く無意味です。クリニック側を儲けさせているだけ、という事実を医学的に検証してきます。

結論を先に伝えると、外用薬と経口薬を併用したいなら、外用薬はミノキシジル以外を主成分とした市販の育毛剤にしてください。

ミノキシジルは髪の成長因子の誘発などの作用が多少はあっても、主作用はあくまで血管拡張。

ところが、毛細血管は非常に細い血管ゆえ、ミノキシジルが浸透しても少ししか拡張しません。毛細血管にミノキシジルを作用させたとしても発毛効果は限定的になってしまうのです。

大正製薬リアップが発売されてからもう20年以上が経過しているのに、日本国内の薄毛患者の数が減ったという話を聞いたことはありません。残念ながらミノキシジル外用薬でフサフサになることはありえません

頭皮の毛根周辺にあるのは毛細血管です。ミノキシジル育毛剤としてふりかけると頭皮から浸透して毛細血管に作用しますが、これだとほとんど血流は良くならず栄養分が毛根まで届いてくれません

リアップだけではなく、アンファー(スカルプD)のメディカルミノキ5やロート製薬のリグロEX5などの最新のミノキシジル発毛剤も同じ感想です。

ミノキシジルを外用薬として使用しても発毛は限定的で効いたとしても頭頂部だけ、M字部分(ひたいの生え際)には効果がほとんど出ません

作用秩序は同じですが作用する場所が違います。タブレット剤として服用した場合、ミノキシジルは細動脈に作用すると考えられ、M字を含めて発毛促進効果が期待できます

経口薬としてミノキシジルを服用した場合の作用秩序は育毛剤の場合と違うのでしょうか?

ミノキシジルタブレット(通称ミノタブ)は飲み薬なので、胃から小腸を経て体内に吸収され、細動脈を動かしている細動脈平滑筋に作用します。

細動脈は別名「抵抗血管」と呼ばれ、動脈から流れてくる血液の勢いを弱める役割をはたし、恒常的に収縮気味になっている、つまり血管を細く保っているのです

ミノタブは、収縮している細動脈を広げる作用を持っていて、細動脈が広がると血液は毛細血管に流れやすくなり、栄養分も毛根に届くように。そしてこのことにより、AGAで弱った髪の毛に対して成長を促していくのです。

先ほどの血管図を見れば分かるとおり、細動脈は毛細血管の手前の血管なので、細動脈にミノキシジルが効きさえすれば血流は良くなります。毛細血管にミノキシジルを浸透させる必要はありません。

つまり「大は小を兼ねる」ということなので、ミノキシジル育毛剤ミノキシジルタブレットを併用する必要性は「無い」ということです

併用が意味がないということは、順番は育毛剤が先で内服が後ということでいいのでしょうか?切り替えのタイミングを含めて教えてください。

その順番でOKです。まず外用でミノキシジルを使用してみて、4か月経過しても初期脱毛が起きないならミノタブに切り替えてください

ミノタブは副作用が強い薬なので、ミノキシジルを使用するならまずは育毛剤が先です。これは鉄則。

ミノキシジル育毛剤として使用した場合の発毛効果が限定的であるとはいえ、6-7人に1人くらいミノキシジル育毛剤が完璧にハマる人がいます。

確率15%以下なので「低いっ!」と思われるかもしれません。それでも宝くじと比べたらありえないくらいの高確率で、副作用は頭皮のかぶれ程度でリスクはゼロに等しく試さない手はないと思います

ミノキシジルが効いてくると、まず最初にヘアサイクルでいうところの退行期に入り髪の毛が抜けていきます。これが初期脱毛。

ただでさえ薄いのに、さらに抜けてしまうのは恐怖でしかないと思いますが、初期脱毛なき発毛はありえないので、ミノキシジルを使用して4週間前後経過した時に、朝起きて枕元にびっしり抜け毛が付いていたなら、それはOKサインです

通常なら使用開始してから4週間前後で初期脱毛が始まり、その後2か月くらい「抜け期」が続きます。その長いトンネル(抜け期)を抜けミノキシジルを使用開始してから4か月目くらいには、はっきりと目に見える形で発毛が実感できるはずです。

逆に4か月経過しても初期脱毛が起きていないなら、処方されたミノキシジル育毛剤はあなたには効いていない証拠になります。その時点で使用をストップしミノタブ(飲み薬)に切り替えてください。

リアップなどの説明書を読んでみると「最低半年は使用してください」とだいたい書いてありますが、半年は長すぎます。

大丈夫、というよりも、初期脱毛でガッツリ抜けないとガッツリ生えてこないので、たくさん抜けたほうがよいサインといえます。なんとかストレスに耐えてください。

ミノタブの場合でも、服用開始してから4か月経過しても初期脱毛すら起きないなら服用を中止してください。ミノタブは循環器(心臓・肺・血管)に副作用が出る半劇薬なので、効かないなら出来るだけ早いタイミングでやめるべきです。

AGAクリニック側は、効果が出ないとミノタブの濃度をどんどん上げていくよう提案してきます。

中には致死量と言っても過言ではない10mgという超高濃度のミノキシジルタブレットを平気で処方しようというヤブ医者(口が悪くてすいません)がいて、恐ろしいことです

限界濃度は2.5mgまで。それ以上は副作用がきつく危険ですが、心電図を定期的に測り循環器に一切の問題が出ていないことを確認できていた場合のみ、例外中の例外で5mgまでならギリギリOKです

ミノキシジルタブレットは副作用が強い薬なので服用するか否かは慎重に判断して欲しいですが、現実問題としてミノタブ無しで薄毛が解消するとは考えにくいです。

つまり、実質的にミノタブは薄毛治療には必須ですが、ミノタブと、リアップや海外製のカークランドのようなミノキシジル発毛剤を併用すると効果効能がダブってしまうので意味がありません。

ミノキシジルはあくまで発毛成分であって脱毛予防効果はありません。

ミノキシジルでどんなに発毛させも、AGA(男性型脱毛症)の進行を止めないことには治療の意味がなくなってしまいます。脱毛予防薬であるプロペシア、あるいはザガーロを必ず併用して治療にあたってください

 

外用で初期脱毛が起きない場合4か月目途に内服に切替えよう